Z[√-3]において、35を素元の積に分解せよ. Z[√-3]の意味から、具体的な解説も!

代数学

このサイトでは、大学数学の色んな問題を提示してます. 今回は、”代数学“の問題である”整数環“についての問題を解いていきましょう!!


今回の問題は、代数学の中でも勘違いしやすい問題となっています. 問題を解くにあたって、重要な事柄も説明し、しっかり理解できるように書いていきます.



“目次”

疑問
問題
ヒント
~重要な事柄~
問題-解説
問題-解答
解答の解説
まとめ




今回は次のような疑問を解消していきます!!一つでも当てはまる方は必見です!


素元と既約元の違いが分からない、、、素元の積に分解するとはどういう意味?、、、\(既約元 \iff 素元\)となる場合がある?、、、そもそも解き方が分からない、、、。など、、、。



上記のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?僕も最初は素元と既約元の違いが分かりませんでした。以下ではしっかりと解説していきます!!



ではさっそく、問題を解いていきましょう!!



 \(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]=\){\(a + b\sqrt{-3} | a, b \in \mathbb{Z}\)}において、\(35\)を素元の積に分解せよ



この問題は、素元と既約元の問題を解く上でとても効果的ですごく良い問題です!頑張って解いていきましょう!



では、まずヒントを見ながら自分で解いて見ましょう!


ヒント
\(素元 \iff 既約元となる条件は条件は?\)、\(35 = 5×7の5と7は\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]の中では既約元であるか?\)、ノルムを使って調べることはできるか?



ヒントの手順に従って解くと順序立てて解くことが出来ます。



では、解説を見ていきましょう!!まず、この問題を解く上で重要な事柄を解説していきたいと思います!



~重要な事柄~

まず、

・\(素元の定義:Xを整域とし、x \in Xを0でも単元でもない元とする.このとき、\)\(xが生成するイデアル(x)が素イデアルのときにいう。すなわち、\forall y, z \in Xに対して、\)\(y, z \in (x) \Rightarrow y \in (x) または、z \in (x)が成立するときにいう\)

・\(既約元の定義:Xを整域とし、x \in Xを0でも単元でもない元とする.このとき、\)\(\forall y, z \in Xに対して、x=yz \Rightarrow yがXの単元または、zがXの単元であるときにいう。\)

・\(素元分解整域(UFD) \Rightarrow 素元 \iff 既約元\)が成り立つ.

・\(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]はUFDである\)

・\(この問題の場合は\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]がUFDであるので、既約元の積で表すと題意を満たす\)



上記のことに注意しながら実際に問題の解説にはいっていきます。



問題-解説


 \(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\)={\(a + b\sqrt{-3} | a, b \in \mathbb{Z}\)}は\(UFD\)であるので、\(素元 \iff 既約元が成り立つ。\)よって、既約元の積の形で書くことと、素元の積で書くことが同値であるので、既約元を求める。

既約元の定義より、\(5と7が\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\)上で積の形で表したとき、一方が単元になっていればそれは既約元である.

すなわち、\(5と7がどちらとも既約元であるかどうかを確認すればよい\)

\(方針としてはこのような感じで解いていくことになります。\)

\(ではこれを踏まえて、一緒に考えていきましょう!!\)



では解答を見ていきましょう!少し複雑なところは後ほど解説していきますので答えを見ながら理解していきましょう。



  証明

\(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\) = {\(a + b\sqrt{-3} | a, b \in \mathbb{Z}\)} は \(UFD\) であるので、\(素元 \iff 既約元が成り立つ。\)

ここで、\(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\) において、\(35 = 5 × 7\) となるので、その既約元の積で表すと求めたいものになる。

ここで、\(5 = \alpha \beta(\alpha, \beta \in \mathbb{Z}[\sqrt{-3}])\) と分解したとする。

ここで、両辺のノルムをとると、

\(25 = N(\alpha)N(\beta)\) となり、\(\alpha, \beta\) がいずれも単元でないと仮定すると、\(N(\alpha) = 5\) となるしかない。

このとき、\(m^2 + 3n^2 = 5\) となる整数 \(m, n\) が存在する。

\(n \geq 1\) のとき、\((左辺) \neq 5\) となってしまうので、\(n = 0\) であるが、\(m^2 = 5\) をみたす整数 \(m\) は存在しないため矛盾する。

よって、\(\alpha, \beta\) のどちらかは単元になるので、\(5は\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]の既約元。\) 

\(7も同様に、7 = (2 + \sqrt{-3})(2 – \sqrt{-3})\) と表せるので、\(2 + \sqrt{-3}\) と \(2 – \sqrt{-3}\) が \(7\) の既約元かどうか確かめる。

\(2 + \sqrt{-3} = (a + b\sqrt{-3})(c + d\sqrt{-3})(a, b, c, d \in \mathbb{Z})\) とし、両辺にノルムをとると、\(7 = (a^2 + 3b^2)(c^2 + 3d^2)\geq 16\) をみたす \(a, b, c, d \in \mathbb{Z}\) は存在しない。

よって、\(2 + \sqrt{-3}\) は既約元であり、\(2 – \sqrt{-3}\) も同様の議論により既約元となる。

以上より、\(35 = 5・(2+\sqrt{-3})(2-\sqrt{-3})\) と素元の積に分解できる.                                証明終



では、今から解答の解説をいていきたいと思います!もし、解答を見ても分からなかった方は見ていってください!

解答の解説


まず、\(5\) が既約元であることを証明するために、ノルムを使うと効果的です。

ここで、\(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\) 上で、\(5 = \alpha \beta(\alpha, \beta \in \mathbb{Z}[\sqrt{-3}])\) の両辺にノルムをとると、\(25 = N(\alpha)N(\beta)\) と書けます。

ここで、\(N(\alpha)とN(\beta)は、\)\(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\) 上で、ある整数 \(m, n\) を用いて \(m^2 + 3n^2 = 5\) とある整数 \(s, t\) を用いて \(s^2 + 3t^2 = 5\) と書ける。

ここでは、どちらか一方だけの場合を考えれば良いので、\(m^2 + 3n^2 = 5\) を考えることとする。

ここで、解答のように確かめると、矛盾を導ける。

また、\(7\) の場合は \(7 = (2 + \sqrt{-3})(2 – \sqrt{-3})\) と \(\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]\) 上で分解することが出来るので、\((2 + \sqrt{-3}) か (2 – \sqrt{-3})\) のどちらもそれ以上分解できないことを示せば良い。



以上で、今回の代数学の問題である整数環の問題は終わりです。沢山問題を解いて実力を伸ばしていきましょう!!



まとめ


今回の整数環の問題は代数学の中でも基本的な問題になっていて、素元既約元を理解するのにはもってこいの問題となっていますので、素元既約元に関する知識を深めたい方は是非何回か見ることをオススメします!!
また他にも、\(UFD\)ノルムに関することもとても大切な概念なのでそれも一緒に知識として深めましょう!




補足

このサイトでは、高校、大学数学に関する様々な問題と、解説解答を提示しています. また、高校、大学の定期試験などでよく出題される問題など基礎的な問題に触れていますので、数学科はもちろん、興味のある方にも理解できるように解説しています。

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